ラッフルズとミス・ブランディッシ(Raffles and Miss Blandish, 1944)
ジョージ・オーウェル 著
H.Tsubota 訳
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半世紀近く前に初めて登場して以来、「アマチュア泥棒」ラッフルズはイギリスのフィクションの中でも最もよく知られたキャラクターであり続けている……続きを読む
オーウェルによる評論「Raffles and Miss Blandish」の日本語訳。
この評論でオーウェルは2つの犯罪小説を比較し、そこから見える世相を論じている。1冊目は1900年頃に出版された「紳士泥棒ラッフルズ」シリーズ、2冊目は1939年に出版された「ミス・ブランディッシの蘭」だ。
ラッフルズは「アルセーヌ・ルパン」シリーズや「シャーロック・ホームズ」シリーズと同時代の作品で、その雰囲気も近いものがあったようだ。主人公は社交界の人間で、泥棒ではあるが暴力や性的な罪は犯さず、愛国的な人物として描かれている。
一方の「ミス・ブランディッシの蘭」はいわゆるハードボイルド小説の走りで、凄惨な暴力描写や性描写によって出版当時は激しい賛否を呼んだらしい。
オーウェルは「ミス・ブランディッシの蘭」の文章を「珠玉の美文」とほめつつもその内容に対しては否定的で、2つの作品を比較しながら、戦争の影響、リアリズム(オーウェルはこの言葉を否定的に使うことが多い)、アメリカ的価値観の高まりについて論じている。