絞首刑 (A Hanging, 1931)
ジョージ・オーウェル 著
H.Tsubota 訳
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ビルマでのある雨に濡れた朝のことだった。黄色いアルミ箔のような弱々しい光が刑務所の高い壁の向こうから差し込んでいた。私たちは死刑囚の監房の外で待機していた...続きを読む

ジョージ・オーウェルの「A Hanging」の日本語訳。
オーウェルは19歳から24歳までの間を当時イギリスの支配下にあったビルマ(現在のミャンマー)で警官として過ごした。その経験に基いて書かれた作品が「ビルマの日々」、「象を撃つ」そしてこの「絞首刑」だ。
"水たまりを避けようと脇にそれる囚人を見たとき、十全な生命を刈り取るという行為の不可思議さと言い表せないほどの不当性を私は理解したのだ。"
"男と私たちは共に歩む一団だった。同じ世界を目にし、耳にし、感じ、理解していた。そして二分間のうちに唐突な枯れ木を折るような音と共に私たちのうちの一人がいなくなる・・・一つの思考が、一つの世界が消え去るのだ。"
"何人かが笑った・・・何がおかしいのかは誰もわかっていないようだった。"
「絞首刑」では監獄から引き出され絞首刑にされる囚人とその周りの人々の様子が散文的に描かれている。
オーウェル自身は「絞首刑」については尋ねられても「ただのお話だ」と言って詳しいことを話さなかったそうで、これが実際にあったことなのかは定かではない。
ただ絞首刑というモチーフはオーウェルの他の作品でも取り上げられているので(この「絞首刑」の通りだったかはともかく)オーウェルが実際の絞首刑を目撃したことは十分に考えられる。
ちなみにオーウェルの母国であるイギリスでは1998年に死刑が廃止されている。
翻訳の元となった原文はProject Gutenberg Australia から入手したものを使用した。
オーウェル評論集 2 |
一九八四年[新訳版] |