ウェルズ、ヒトラー、世界国家 (Wells, Hitler and the World State, 1941)
ジョージ・オーウェル 著
H.Tsubota 訳
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「事情通の言うところでは三月ないし四月にイギリスにとてつもない一撃が加えられるだろうということだ……ヒトラーがそこで何をおこなうか、私には想像もつかない。今や彼の衰えて分散された軍事的資源は……続きを読む
1941年8月に「Horizon」に掲載された「Wells, Hitler and the World State」の日本語訳。
1866年生まれの作家H.G.ウェルズは1903年生まれのオーウェルから見るとほぼ1世代上の世代にあたる。
当時、ウェルズは作家としての評価を確立し、フェビアン協会への参加、国際連盟樹立の提唱、ワシントン軍縮会議への出席などによって社会活動家としても広く知られていた。一方のオーウェルは「カタロニア讃歌」などで知られるルポタージュ作家だったが代表作である「動物農場」、「一九八四年」はまだ発表されていないという状況だった。
評論の中でオーウェルはウェルズに象徴される当時の主流的な知識人が全体主義の理解に失敗し、それに対抗する力を失ったことを指摘している(これは「ガンジーを顧みて」の中でのガンジーに対する評価とも共通する)。
それは次のような一節で表されている。
実際に世界を形作るエネルギーは民族自尊の感情、指導者に対する崇拝、宗教的信念、戦争への愛から湧き出すのだ - これはリベラルな知識人たちが時代遅れだと機械的に切り捨てたものであり、通常は彼ら自身の手で完膚なきまでに破壊したものであり、そのために彼らは全ての行動のための力を失ったのだ。
オーウェルに言わせればウェルズはその典型だった。
ウェルズは現代世界を理解するにはあまりに良識的過ぎたのだ。
70年以上前に書かれた評論だが世界的に右派政党が議席を伸ばし、ネット上での「ナショナリズム」に懸念の声が上がる今、一読の価値があるのではないだろうか。
翻訳の元となった原文は過去にProject Gutenberg Australia から入手したものを使用している。
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