イギリス料理を弁護する(In Defence of English Cooking, 1945)
ジョージ・オーウェル 著
H.Tsubota 訳
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外国の観光客をこの国に呼び込むことの重要性については近年、多くの議論がなされている。外国からの来訪者から見たイングランドの二つの最悪の欠点は有名だ。すなわち日曜日の陰鬱さと酒を買いづらいことである……続きを読む
ジョージ・オーウェルの「In Defence of English Cooking」の日本語訳。
イギリスの料理と言えば悪名高く、日本語版Wikipediaのイギリス料理の項目には『「不味い」というイメージ』という節が設けられるほどだ。一説によると世界で初めて産業革命(とそれによる劣悪な工場労働)が起きたことが原因だという研究もあるらしくなかなか面白い。
このエッセーに話を戻すと、第2次大戦が終わったこの時期にイギリスでは国外の旅行客を呼び込むことの重要性が議論されていたらしい。当然、イギリス料理も問題とされたのだろう。
そこでオーウェルは「イギリス料理が不味いというのは誤解だ」としてキッパー(燻製ニシン)、ハギス(羊の内臓料理)、スティルトン(ブルーチーズの一種)などイギリス特有のおいしい料理を列挙し、イギリス料理の擁護弁論を行っている。
ではなぜイギリス料理が不味いと言われるのかというと、まともな料理は家庭でしか作られず、レストランでは出されないからだという。イギリスのレストランではフランス料理が出され、そのせいでイギリス料理は「不味い」だけでなく「フランスの真似事」という汚名まで着せられているとオーウェルは憤っている。
「ブレイの牧師のための弁明」や「一杯のおいしい紅茶」、「ヒキガエルにまつわるいくつかの考え」と同様、自然や文化を愛好するオーウェルの一面が出たエッセー。